目的が明確になれば学習は遥かに進むのである。
臨床で記憶に残る経験をさせてもらった。
学習を積み重ねて左手の不使用に対する関わりを続けていくと
ひ孫をだっこしたいという明確な目標をご本人が打ち出してくれたら、
なんと次の日にひ孫が病院に見舞いに来てくれたので、
実際には大変でチャレンジングなことでしたが、
子供の両親にも協力してもらいながら4か月半の
ビックな子供を麻痺側の上肢も使ってもらいながら抱っこしてもらいました。
そうするとですね。今までみたこともないくらい、麻痺側の上肢にも力が入っているのですが、すごく力の調整をしながら赤子が安心するように心地よい力加減を調整しようとご本人が実践している状況に出会えたのです。
私は、ただただひたすら、ご本人の後ろから必死にひ孫を心地よく抱こうとしている
ご本人の麻痺側上肢の腕と身体全体のつながりを受け止め続けました。
そして、ひ孫ちゃんがばたばたと遊んで動いているのに合わせてご本人の動きのつながりが適応していけるようにハンドリングをしていくという実践をしました。
そしたら、めちゃくちゃご本人の麻痺側上肢が動きやすくなっているんです。
その後はあんよ、あんよ。元気にするんだよ。とご本人がいったので、
子供をご両親に抱っこしてもらい、ひ孫ちゃんのあんよをご本人に両手でつかんでもらい、ひ孫ちゃんが楽しく両足をランダムにキッキングすることに対して、
ご本人が心地よく足を把持してられるように支援をしました。
そしたら、さらに麻痺側上肢が動きやすくなっているんです。
患者さんに泣きながら 本当にありがとう。 と泣きながら
麻痺側の左手を突き出してきて、左手で握手をしました。
あ、麻痺側の手を使うという認識ができたのね。
その2時間後にはひ孫が来ていたことと抱っこをしたというエピソードは覚えているものの、麻痺側上肢を心地よく使えたという実感は忘れていた。 笑
しかし、次の日にまた身体を触らせてもらうと確かに身体は新たな上肢と身体全体のつながりを記憶しているのである。
学習はもちろん脳に記憶されるのかもしれないけど
身体全てに動きの学習を記憶はなされるのかもしれない。
学習は無限だ。と本当に思った。
さらに、発見したことーー!!
いわゆる左麻痺 といえば
左半側視空間無視
身体失認
注意障害
等よくみられる現象です。
この度経験させてもらった方も上記現象がばっちり出ている方。
おまけに中々の認知症の進み具合であり、
1時間前にあったことを忘れてしまうこともあります。
麻痺は軽いので、麻痺側上肢で顔を触ったり、反対の肩を触ったりすることも
何とか可能である。
しかし、少しでも努力的に麻痺側を使おうとする認識が強いとすぐに非共同的な運動パターンがでたり、肩の局所に負担がかかり、痛みが生じ麻痺側上肢を使いたくなくなる特徴のある方でした。
さらには・・・
動作が性急(もともとの性格でちゃきちゃきっと動く人)
かつ、自分の病識はあるものの・・・
なんで自分はこの病気のせいで、今まで簡単にできていたことなのに
こんなことできないの!!!
と憤る日々。 その怒りや今後の行く先の不安から
余計に精神的に不安となり認知症状が増悪し
リハも集中して行えないことが度々であった。
まず、自分の今の状況を理解することができていないのが一番の問題だ!!
と考え丁寧に、一つ一つ身体の部分部分を一緒に認識し
ご本人が自分で急いで動かそうとして痛みや余計な力を入れていることすらも
受け入れて上肢とのつながりを探究することを積み重ねていくと・・・
いわゆる非共同的運動がパターン化されて動いてしまう癖の強い方であったものの、
どんな動きのキューが入るとそのパターンになるのか??
そのステレオになってしまうパターンすらゆっくり丁寧に動いてもらうことで
どのようなつながりが身体全体にあるか一緒に受け止めてみました。
するとですね、本人も動きの提案をしている私自身も知らないいつもの運動パターンのつながりに気づいてくるとですね。
いつもの同じ動きの道筋の途中で、いつもと違った方向に動きたそうな反応が出てきたのです。
本人の習慣的な動きから入っていきながら少しずつ提案していくことが
簡単から複雑にということである。
という大事なことを思い出すことに(^^)/
なぜその習慣的な動きをしてしまうのかゆっくり向き合っていくと、ご本人の口から
あー私はわざわざ痛みが出る途中で動きが出ればよいのに動き過ぎてしまうのね。
とか、左手は動くもんじゃないと思っているからすぐ良い方の右手を使ってしまうのよ。
とか、すぐ私は痛みが少しでも起きそうな気がしたら警戒しちゃうのよね。
と自己認識がどんどんできてくるわけなんです。
ですが、1~2時間後には記憶の中には、リハで行っていることは忘れてしまっているのです。 (-_-;)
しかし、身体は丁寧な自分との動きの向き合い方を覚えているので、
次回お会いした時には、
ご本人の自己認識ができるモードに入るまでが早くなるのです。
学習は積み重ねですね。